クラリーノと牛革。ランドセル素材の違いを知りたい
「軽い、水濡れに強い、摩擦に強い」といわれているのがクラリーノを代表とする人工皮革、若干重くて雨に弱く、傷がつきやすいけれど、しっかりしていて古びても味わい深いのが牛革やコードバン(農耕馬のお尻の革)などの本革だと言われています。少し詳しく説明します。
クラリーノの特徴とメリット、デメリット
もともと靴用として開発されたクラリーノですが、今ではランドセル専用の人工皮革と認識されるほどになっています。天然の革と同じように繊維を絡み合わせて作られていますが、化学繊維ですから素材自体が牛革やコードバンなどの天然皮革(本革)に比べて軽いのが最大の特徴でしょう。同じ構造、同じ大きさでランドセルを作ると、200g前後は本革より軽くなります。
工場で大量生産するため品質が安定しており、カラーバリエーションも豊富に用意されています。表面はコーティング(薄くて強い膜)で覆われていますから、摩擦に強く、水もしみ込みにくい。もともと化学繊維ですから、水濡れや汚れにくさに関しては、申し分のない性能を備えているわけです。その上、価格も安い。
当初は表面がひび割れしやすいと言われたものですが、メーカーの努力で改良が進み、今では本革とほとんど変わらない風合いを確保した上で10年前後の耐久性が保証されています。だから、小学校の6年間の使用では、まったく問題なし。
こうした性質は、クラリーノに限らず、ベルバイオやタフガードといった他の人工皮革も、ほぼ同じ。優れた特徴をいくつも備えているため、ランドセルの素材としては、最適なもののひとつなのです。おかげで、今では80%前後の製品は、クラリーノを中心とする人工皮革で作られていると言われています。
伝統的な天然皮革のメリットとデメリット
ランドセル本体やカブセ(フラップ)の素材としては、牛革とコードバン(馬革)のふたつが使われています。本体の内側やカブセの裏には、天然の豚革が内張りとして使われることもあります。
天然の牛革やコードバンの最大の特徴は、風合いが良いことでしょう。特に高級な革を使った製品には、なんともいえない風格があります。何年も使って傷がついたりしたときも、味わいが感じられます。
人工皮革に比べて耐久性も高いのがメリットと言われることもありますが、それは10年以上使ってはじめてわかる程度と言っていいでしょう。ランドセル用の牛革やコードバンはかなり特殊な革で、彩色をしたあと、表面を合成樹脂のコーティング、つまり薄い膜で覆っています。表面は、人工皮革とほぼ同じなのです。
革そのものの耐久性は、確かに人工皮革よりも上回りますが、表面は合成樹脂の膜ですから、切り口や傷からその膜がはがれることもあるのです。そのため、表面の耐久性に関しては、人工皮革と大差がない。6年間の使用では、クラリーノも本革(牛革、コードバン)も、まったく問題ないというのが本当のところ。ランドセル素材の耐久性の違いは、その程度の話です。型崩れのしにくさなどには、むしろ、補強材を含めた内部の構造が大きく影響します。
デメリットとしては、水濡れや汚れに弱いこと、それに重いことだと言われています。まず水濡れですが、上で説明したように、本革にも合成樹脂の膜を張ってありますから、あまり違いはないと考えていいと思います。水がしみ込みにくく、汚れもつきにくいですし、ごく一部の本革製ランドセルを除き、手入れもほとんど不要です。重さに関しては、天然の牛革やコードバンは人工皮革よりも重くなりますが、牛革とコードバンでも変わります。素材ごとの重さの目安については、「ランドセルは軽いほうがいい?」に記しましたので参考にしてください。
値段も、一般的には本革のほうが高くなります。牛革やコードバンは人工皮革に比べて生産量が限られていますし、ランドセル用の革は大きく(面積が広く)て傷の少ないものが選ばれますから、ますます供給量が少なくなります。それゆえ素材の値段が高いのです。
しかし、小さな工房系ランドセルの中には、人工皮革の高級品と同程度かそれ以下の値段の製品もあります。革の宝石と呼ばれるコードバンは確実にクラリーノより高くなりますが、生産量がある程度多い牛革の場合、人工皮革と価格が同程度のランドセルも多いのです。ランドセルの価格については、「ランドセルはいくらくらい?」のページに記載したので、おおまかな目安にしてください。
クラリーノと牛革、どっちがいい?
以上、クラリーノなどの人工皮革と牛革などの天然皮革の特徴について説明しました。強度や耐久性など素材の性能に関しては、6年間という限られた期間で考えると、両者、あまり差はないと言っていいでしょう。「牛革でなければ」「コードバンにしたい」といったように「本革」「天然皮革」にこだわりたいのであれば別ですが、そうでなければ、素材から先に決めるのではなく、子供が気に入ったデザインや色、重さを含めた背負いやすさ、そして価格などでランドセルを選んだほうがいいと思います。
また、ランドセルの品質や機能は、メーカーの技術力や設計ポリシーでほぼ決まってしまいます。大手から目立たない工房系まで、優秀なランドセルを作っているメーカーがたくさんありますから、知らないメーカーの製品でも、ショールームなどでチェックしてみてはいかがでしょうか。高品質なのに、思いのほか安く、お気に入りの一品が見つかるかもしれません。